司法試験はどんな内容の試験なのでしょうか。受験資格や実施日程など、どんな試験なのかをわかりやすく解説してみたいと思います。
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司法試験とは
司法試験とは、弁護士・裁判官・検察官といった、いわゆる「法曹三者」の登用国家試験です。
これらの職業は、一部特例を除いては司法試験合格が必須であり、司法試験合格者だけにその資格が与えられる、埼玉県和光市にある「司法研修所」の司法修習を経た者しか就けません。
司法研修所の卒業試験的な「二回試験」に合格した者だけが弁護士・裁判官・検察官とそれぞれの職業に就いていくのです。
司法試験は文系理系で分ければ文系に属してると言えますが、その文系では最高峰の難易度を誇る試験と言われています。
司法試験の受験資格
司法試験には受験資格要件というものがあります。普通は年齢とか学歴とかそういったものを考えがちですが、ちょっと違います。
司法試験は2つの要件を除けば特に制限はありません。性別はもちろん、年齢も学歴も国籍も受験資格制限に引っかかることはありません。 司法試験を受験できるたった2つの要件とは何でしょうか。
法科大学院課程修了
一つ目の要件は、法科大学院課程修了です。法科大学院とはいわゆるロースクールのことで法律家養成機関です。
法科大学院には入学試験があり、受験資格も存在しますが、その試験に合格して法学部出身者は2年、他学部出身者は3年で修了し司法試験受験資格を得るというものです。これが一つ目の要件。
課程修了しなくても司法試験受験できる
現行法上は上記の通り法科の課程修了にて司法試験受験資格を得るわけですが、法改正の施行が行われ法科大学院在学中でも司法試験受験資格を得れることになりました。すなわち、
- 所定の単位を取得
- 1年以内に当該法科大学院の課程を修了する見込み
1及び2の要件を満たしていることを当該法科大学院を設置する学長が認定した者は、特例として司法試験受験資格を得ることになります。 施行が2022年10月1日からなので、2023年度の司法試験から適用になります。
予備試験合格
もう一つが、予備試験合格です。予備試験とは、法科大学院課程修了と同等の学力・学識を問うという試験で、新司法試験制度下において2011年より実施が開始されました。
この予備試験に合格すれば数年間の法科大学院修了と同等の資格を得ることができるのです。 予備試験の詳細ご参照ください。「予備試験とは」
司法試験受験資格取得方法まとめ
2つの司法試験受験資格方法を図にしてまとめてみました。これが現在施工されている司法試験制度の大まかな流れになります。
参照「予備試験と法科大学院を比較してみた。どっちのルートが良い?」
司法試験受験資格喪失要件
法科大学院課程修了もしくは予備試験合格という、何年もかかって死に物狂いで獲得したはずの司法試験受験資格、失ってしまう場合があるのです。司法試験受験には期間制限と回数制限があります。
- 法科大学院課程修了者・・・修了後最初の4月1日より受験期間5年間のうち5回まで受験
- 予備試験合格者・・・合格発表後の最初の4月1日より受験期間5年間のうち5回まで受験
ちょっとややこしいかもしれませんが、司法試験受験資格を取得してから最初の4月1日から5年間で5回まで受験できるということなのです。わかりやすく図にしてみました。
司法試験は例年年1回7月開催ですから、資格取得してから5年間は司法試験受けられますよ、ということになります。
試験科目
司法試験は法律家登用試験ですので、試験科目は当然法律が中心です。 科目は全部で8科目。
基本7科目の憲法 / 行政法 / 民法 / 民事訴訟法 / 商法 / 刑法 / 刑事訴訟法と選択科目(知的財産法 / 労働法 / 租税法 / 倒産法 / 経済法 / 国際関係法(公法系) / 国際関係法(私法系) / 環境法より選択)です。
司法試験の科目については、こちらで詳細を解説していますのでよろしければご参照ください。→ 「司法試験の科目は?元受験生目線の科目別難易度解説!」
論文試験と短答試験
司法試験には2通りの試験があります。それは論文試験と短答試験です。2つは全く異なる試験ですので、全く別の対策が必要になります。 この論文試験と短答試験をそれぞれ解説していきます。
論文試験
論文試験とは、問われた問題に対して論述形式で解答する試験です。法曹実務は、文章を書くことが仕事という側面もあります。訴状や準備書面だったり判決文だったり、起訴状だったり…
もちろん、フリーハンドで書いて良い文書ではなく、一定のルールに従って論理立ったものでなければなりません。 論文試験はその適性があるかどうかを問う試験と言えるでしょう。
自分で答案を作り出す試験
論文試験の問題は、1問につき長文の事例と3つの設問でなり立っており、それを1500字程度で論述していく試験です。
いわば、自分で答えを作り出していく試験と言え、その意味では、「合格答案」というものはありますが、正解というものがあるわけではありません。
難易度はきわめて高く、プロから指導を受けないと合格答案を書くのはほぼ無理といえるでしょう。 論文試験は、超難関試験である司法試験を象徴する試験であり最大のヤマ場といえます。
論文の試験科目
論文試験では、司法試験の試験科目である8科目すべてが出題されます。基本7科目は1科目につきおよそ1問(そうでない場合もあり)出題され配点が100点。2時間が充てられます。
時間・問題数・配点選択科目3時間・2問・50×2基本7科目2時間・(およそ)1問・100点合計800点
論文の過去問を見てみよう
論文試験ではどんな問題が出題されるのか。百聞は一見に如かずですので、何はともあれ見てみましょう。 上でも書いた通り、論文の問題は長文です。事例と設問で2ページ近くにもなったりします。
ですので、ここにリンク貼っておきますので、法務省の該当箇所でご覧いただいた方が良いと思います。 令和元年度司法試験の過去問のページにリンクを貼っておきましたが、
さらに遡ることもできますので、興味がある年度の問題をご覧ください。 http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00177.html
短答試験
短答式試験とは、問題文があってその正解と思われる肢を選択してマークシート方式にて解答する試験です。 肢の中には正誤の判別がつきにくい肢が必ず紛れ込んでいますので、正確な知識が問われます。
また、単なる正確な知識のみならず、事務処理能力も問われます。パズルのように組み合わせの問題だったり、わざと言い回しを難しくしたり、結構イジワルです。
解答スピードも問われますので、知識はあっても短答は短答でそれ相応の訓練がないと合格点は取れません。
短答の試験科目
短答で出題される科目は、いわゆる上三科目である憲法、民法、刑法です。
憲法、刑法は20問づつ、民法は36問が例年出題されています。これを憲法50分、民法75分、刑法50分で解答します。
時間・問題数・配点 | |
---|---|
憲法 | 50分・20問・50点 |
民法 | 75分・35問・75点 |
刑法 | 50分・20問・50点 |
合計 | 175点 |
短答の過去問を見てみよう
短答ではどんな問題が出題されるかを見てみましょう。法務省で過去問を公開しているので拾ってきました。 問題は令和元年度の憲法の5問目です。
ア、イ、ウの文章の正誤を判断してその組み合わせを肢から選ぶという問題ですね。いずれも規制の根拠になっている法令の合憲性についての文章ですが、やはり、司法書士や行政書士の憲法の問題とは違います。
違憲審査基準の知識がなければ正解にたどり着けない問題です。
合格点は?
司法試験は論文で8科目合計800点、短答で3科目合計175点が満点ですが、このうち何点取れば合格になるのでしょうか。
短答試験の合格点とは
短答試験は、3科目の合計がおよそ60%強の得点で合格と言えるでしょう。175点満点ですので、108点ぐらいが合格ラインと言えそうです。110点あれば安全圏でしょうか。
短答試験には足切りがある
短答試験で気を付けたいのは、足切りがあるという事。足切りとは、一定の点数に達していないと、その先は採点してもらえないことです。
具体的に、憲法・民法・刑法の1科目でも40%以上の得点ができないとその時点でアウト、論文試験は採点してもらえないのです。
最終的な合否は論文と短答の総合点によりますが、配分の高い論文の採点がないというこという意味でも不合格。試験は同時期に行われますが、短答だけ一足先に合格発表があるのはそのためなのですね。
論文試験の合格点とは
論文試験は1科目につき100点満点ですが、取った点数に応じて4段階の評価を与えています。表にしてみました。
評価 | 点数帯 |
---|---|
優秀 | 75点~100点 |
良好 | 58点~74点 |
一応の水準 | 42点~57点 |
不良 | 0点~41点 |
4段階のうち、さすがに「不良」は合格点ではありません。しかし、その上の「一応の水準」の上の方であれば合格点とされる場合が多いようです。
点数にして、1科目平均で55点以上であれば合格点と考えていいかもしれません。 予備試験でもそうでしたが、論文試験で実際に取れる点数は案外高くないし、合格ラインもその分低くなります。
ですので、ありもしない正解を目指さず、現実的な合格答案が書けるように対策を立てると良いと思います。 参照:「予備試験の配点は?各試験の合格点はどのくらい?」
試験日程
司法試験の日程のお話をしていきます。司法試験は例年、5月中に行われます。5月中旬から4日間かけて集中的に行われます。途中、2日目の翌日に「中日(なかび)」が置かれて休みになります。
結果、土日含めて5日間は司法試験に費やすことになります。 4日間では以下のようなスケジュールで実施されることになります。
科目カテゴリー | 出題試験科目 | |
---|---|---|
1日目:論文 | 選択科目、公法系 | 選択科目、憲法、行政法 |
2日目:論文 | 民事系 | 民法、民事訴訟法、商法 |
3日目:論文 | 刑事系 | 刑法、刑事訴訟法 |
4日目:短答 | 憲法、民法、刑法 |
司法試験のスケジュール
司法試験は、かなりの長丁場です。予備試験や法科大学院も含めると、本当に何年もかかる試験ですし、司法試験だけ見ても試験公示から合格発表だけ見ても1年弱の月日を要します。
司法試験のスケジュールについて、時系列で4段階に分けてみました。
- 試験公告
- 願書の公布・受付
- 司法試験本番
- 合格発表:
1.試験公告
試験の公告とは、「次の司法試験はこんな感じで実施しますよ」というお知らせです。日程や試験会場など、受験生にお知らせすることですね。
同時に、願書の申し込み方法なども発表になります。 試験公告は法務省のHP内で、例年12月の上旬です。
2.願書の公布・受付
試験公告において、「受験案内」という形で次の司法試験の開催詳細が発表になります。 受験希望者は、この受験案内にある通りに出願する必要があるわけですが、それには願書を手に入れないければなりません。
願書は基本郵送で手に入れる形になりますが、法務省に取りに行っても受け取ることができます。ただし、出願は郵送のみなので注意が必要です。
必要書類や写真の添付など含め、記載事項をしっかり記入して出願します。受験料は28000円です。収入印紙にて願書に添付して納めます。
出願期間は11月中旬すぎ頃から12月の初め頃まで。あまり長くないので忘れずに出願を済ませてください。 試験の1か月くらい前に受験票が郵送されてきます。
3.司法試験本番
試験本番です。前述のとおり、7月中旬に4日掛けて行われます。3日は論文試験、1日は短答試験です。 試験会場は全国の大都市で開催されますがあまり多くありません。
令和2年度ですと、札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市で行われる予定になっています。
4.合格発表
合格発表ですが、司法試験の場合、ちょっと変則的です。既出の通り、司法試験には短答試験で足切りがあります。短答で基準点に満たないと論文の採点はしてくれません。すなわち不合格です。 そのため、短答の合格発表のみ先に発表します。
例年8月初旬です。ここで短答に合格すれば論文の採点をしてもらえるのでまだ望みはありますが、不合格だと翌年以降に持ち越しです。
最終合格発表について
そして、論文の合格発表、つまり司法試験の合格発表ですが11月初旬に行われます。合格発表は法務省HP内か掲示になります。試験を行った全国7都市でそれぞれ行われますが、東京の場合は法務省です。
そして、例年9月中旬に合格通知書が郵送されてきます。その後、例年9月下旬~10月上旬に合格証書授与があります。
まとめ
以上、文系最難関の国家試験、司法試験の内容でした。 司法試験そのものも実に大変な試験ですが、予備試験や法科大学院も含めた司法試験制度ということで考えれば、
そのハードルの高さや必要期間の長さは文系最難関試験というにふさわしいものでしょう。
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